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身体は、基本的に体外から摂取する栄養素で筋肉や脂肪、骨が作られます。五大栄養素をバランスよく摂り、一番身近なリズム運動である咀嚼(1口30-40回)が大切です。脳に栄養と刺激を与えることで、セロトニンの分泌が活発になります。
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食事と心の関係や影響
五大栄養素である、糖質・タンパク質・脂質・ビタミン・ミネラルをバランスよく食事から摂ることで、心と身体の健康が維持できます。身体では作ることができない、必須アミノ酸やビタミンCなどを食事から補うことで身体全体の調子が整いっていきます。
どれかが不足することで、脳内神経伝達物質が正常に分泌されなくなり、心が疲れやすくなり、ストレス耐性を弱めてしまいます。
タンパク質不足のメンタルへの影響
タンパク質は20種類のアミノ酸が数十~数百以上が鎖状に繋がってできています。また、20種類のアミノ酸のうち9種類(必須アミノ酸)は、体内で作れないため、食物から摂る必要があります。
脳の命令を身体の隅々に伝える役割を担う脳内神経伝達物質の「ドーパミン」や「セロトニン」は、アミノ酸からできているため、タンパク質が不足すると神経伝達物質が普段通り作られないため、ストレスや疲労が溜まりやすくなる可能性があります。
ドーパミンは、必須アミノ酸のフェニルアラニンとアミノ酸のチロシンを材料にして体内で合成されます。セロトニンは、必須アミノ酸のトリプトファンが材料で、不足すると不眠症や睡眠の質を落とす原因になります。
ビタミンB群不足のメンタルへの影響
ビタミンB群は、B1、B2、B6、B12、ナイアイン、パテントン酸、ビオチン、葉酸の8種類で、糖質・タンパク質・脂質のエネルギー代謝を補助する元気の素です。
また、神経の働きを正常に保つ役割があるため、不足すると疲れ、集中力の低下、やる気が出ない、憂鬱などの症状が現れます。
特に、B6はタンパク質をアミノ酸に分解するために必要で、神経伝達物質の合成に関わり、不足すると、ストレスによりイライラや精神過敏になってしまいます。
鉄分不足のメンタルへの影響
鉄分は、「ドーパミン」「セロトニン」「ノルアドレナリン」などの脳内神経伝達物質を作る際に必要な酵素を助ける働きをしています。
そのために、鉄分が不足すると、セロトニンやノルアドレナリン、ドーパミンが必要なときに作られなくなってしまい、うつやパニック障害の症状を引き起こす可能性があります。
また、鉄分不足に陥ると、めまいや倦怠感、イライラ、冷え性といった症状がみられることもあります。
身体の内部に鉄分を蓄えるタンパク質がフェリチンです。血液中の鉄分が不足するとフェリチンに蓄えていた鉄分が放出され、血液中の鉄分量を一定に保ちます。
ヘモグロビン値(鉄分欠乏性貧血)とフェリチン値(潜在性鉄欠乏症)両方に注意が必要です。
食物繊維不足のメンタルへの影響
食物繊維には、水溶性と不溶性があり、どちらも体内に吸収されませんが健康には重要な役割を果たしています。
水溶性食物繊維は、低カロリーで肥満の予防になるため、糖尿病や高血圧など生活習慣病の予防効果があります。
不溶性食物繊維は、水分を吸収して便の容積を増やし大腸を刺激し排便がスムーズになります。また、有害物質を吸着させ便と一緒に排出するため、腸を綺麗にします。どちらも大腸内の細菌により発酵・分解され腸内環境が改善されます。
腸内細菌には「脳内神経伝達物質の合成」という役割があり、「ドーパミン」「セロトニン」の素を作り脳に届けています。
食物繊維が不足すると、腸内環境が悪くなり、腸内フローラが変わり、自律神経系が乱れる原因にもなってしまいます。
ビタミンC不足のメンタルへの影響
ビタミンCは、体内で作れないため、食物から摂取するしかありません。皮膚、骨などをつくる為に欠かせないコラーゲンの合成に必要であり、活性酸素の除去にも重要な役割を果たしています。
また、副腎から分泌される抗ストレスホルモンであり、脳内神経伝達物質でもある「アドレナリン」を合成するときにも欠かせません。
ビタミンCが不足するとストレスを受けた際に、抗ストレスホルモンが充分に作られないため、ストレスに対する抵抗力が弱くなってしまい、抑うつ状態が見られることがあります。
カルシウム不足のメンタルへの影響
カルシウムは、生命維持に必要な必須ミネラルで一番多く体内にあり、体重の1-2%と言われています。またカルシウムの99%は骨と歯に、残りの1%が血液や筋肉・神経など存在します。
99%を占める「貯蔵カルシウム」が骨と歯を構成し、1%の「機能カルシウム」が脳や筋肉に信号を送る神経の情報伝達を助け、血液の凝固作用を促す働きをしています。
血液中のカルシウムが不足すると、脳⇒神経⇒筋肉の連絡を助ける働きが十分でなくなり、神経の興奮や緊張を緩和してイライラや苛立ちを抑える「精神安定剤」としての働きが乱れる可能性があります。
脂肪酸不足のメンタルへの影響
脂質の90%が脂肪酸でできており、大きく飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸に分かれます。不飽和脂肪酸の中には、リノール酸・リノレン酸やアラキドン酸など体内で合成できない必須脂肪酸が含まれます。
脂質は重要なエネルギー源だけでなく、ホルモンや細胞膜、核膜を構成したり、脂溶性ビタミン(ビタミンA・D・E・K)の吸収を促すなど、重要な役割を担っています。
魚の脂質に多いDHAなどの不飽和脂肪酸が脳細胞の働きを活性化させるといわれています。この脂質が不足すると、脳が疲れやすくなる可能性も考えられます。
また、脳は水分を除くと約60%は脂質からできています。脂質の内訳は、コレステロール約50%、リン脂質約25%、ドコサヘキサエン酸(オメガ3系)約25%という具合です。脳の構成成分からも脂質(脂肪酸)が脳にとって大切な栄養素でありることが解ります。
メンタルが強くなる食生活
脳と身体に充分な栄養素を補給することが大切です。特に日本の伝統的な食事「主食と一汁三菜」を基本に、朝昼晩3食、ある程度決まった時間に食べることが身体に飢餓感を感じさせず理想のエネルギー補給ができます。
脳のエネルギー源の糖質、筋肉や骨を作るタンパク質、細胞膜やステロイドホルモンの原料である脂質などをバランスよく摂ることで、脳が元気に溌溂と過ごすことができます。
海外では食事療法も注目されてきた
これまでうつ病の治療は、「休養」「心理療法」「抗うつ薬」が中心でした。しかし、「食生活など生活習慣改善」が自分でできる治療・予防として注目されています。
海外では、地中海式食事で代表される、野菜・果物・豆類・穀類・魚介を食事でしっかり摂っている人は、うつ病や精神・神経の病気が少ないことが解っています。伝統的な日本食は地中海式食事と共通点が多くあります。
うつ病の人は、どちらかと言えば肥満傾向で中性脂肪や血糖値が高くメタボリック症候群が多くみられます。
理由としては、バランスの悪い食事、不規則な生活、運動不足などがあり、うつ病も生活習慣病の一つと言えるかもしれません。
朝食をとる
脳は、寝ている間も活動しているため、起床時にはエネルギーが不足しています。朝食は、脳のエネルギー源であるブドウ糖をしっかり補充し、脳を活性化させることで身体を目覚めさせる役割があります。
朝食を摂ることで、睡眠中に低下した体温が上昇し、生活リズムが整えられます。また、朝5時頃から腸も活動してくるため、朝食によって更に腸の活動が活発になり、排便を促し腸内環境も整える作用があります。
朝食を抜くと脳のエネルギー源となるブドウ糖が不足し、集中力がなくなり、イライラしやすくなり、思考力が低下してしまいます。
炭水化物だけに偏らない
お米は粒食でデンプン(ブドウ糖が多数つながった状態)が含まれているため、ゆるやかに血糖値を上げ、脳にブドウ糖を安定供給できます。
またお米なら玄米や胚芽米、パンなら全粒粉やライ麦パンなどの精製度が低いものは、ビタミン・ミネラル・食物繊維などが多く含まれているため、栄養価が優れています。
脳のエネルギー源としてはブドウ糖のみですが、脳神経伝達物質やホルモンの生成には様々な栄養素が必要です。
特にうつ病の方は、一部の栄養素が不足していると言われています。それはビタミンB群(ビタミンB1、B2、B6、B12、葉酸)、タンパク質を構成するアミノ酸(メチオニン、チロシン、トリプトファン(必須アミノ酸))、脂肪酸の1つである魚油に含まれEPA(エイコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)、ミネラル(鉄分、亜鉛)などです。
野菜ばかりに偏らない
野菜にはビタミンが豊富に含まれていますが、三大栄養素が不足してしまいます。特にタンパク質が不足すると基礎代謝が落ち、体温が低下し、肌が荒れたり、髪がボロボロになる可能性があります。
基礎代謝量が下がるとは、生きるために使うエネルギー量が減るということで、血管や筋肉や内臓などの機能が衰えるということでもあります。
脂質の少ない良質なタンパク質を摂ることで、身体がエネルギー補給を筋肉(身体内のタンパク質)からすることなく、筋肉量を維持し全身の血流を良くし代謝を上げることができます。
基礎代謝が上がると体温があがり、冷えやむくみや肩こりの解消、病気の予防になります。
うつ病予防の食べ物と献立
「セロトニン」の材料となる必須アミノ酸のトリプトファンの摂取は大切です。また一緒に摂取すると吸収が促進されたり、効率が良くなる栄養素があるので、相乗効果が見込める食材を含めながら献立を考えることも必要です。
野菜などは炒め過ぎず、茹で過ぎず、歯ごたえを残す調理方法が、「よく噛むこと」に繋がるため重要です。
トリプトファン摂取が大切
うつの原因は、脳内神経伝達物質のセロトニン不足と言われています。セロトニンは睡眠や精神安定に関わる物質で、不足すると睡眠障害や不安感などマイナスの精神状態になる可能性があります。
トリプトファンは、セロトニンの材料となる必須アミノ酸です。体内で作られないため食事から全て摂取する必要があります。
またセロトニンから睡眠物質であるメラトニンが作られるため、トリプトファンが不足するとセロトニン、メラトニンも不足することになります。
セロトニンを分泌するのはセロトニン神経です。このセロトニン神経は、日光を浴びること、適度な運動を行うことで活性化されます。
しかし、現代社会では室内で過ごすことが多く、また、身体を動かすことを出来るだけ避ける傾向があるため、セロトニン神経が鍛えられない環境になっています。
うつ病予防の食材
セロトニンは、必須アミノ酸のトリプトファンから合成され、炭水化物を一緒に摂ると吸収率がアップし、またビタミンB6と一緒に摂取するとセロトニンへの合成が効率的にできると言われています。
トリプトファンは、バナナ、牛乳・ヨーグルト・ナチュラルチーズなど乳製品や豆腐・納豆など大豆製品に含まれています。
ビタミンB6が豊富なのは、さつまいも・牛豚鶏のレバー・マグロなどの青魚。イワシからは、トリプトファンとビタミンB6の両方を摂取できます。
炭水化物の代表は白米・パン。なかでも特に良いのは、トリプトファン・ビタミンB6、炭水化物の3つの栄養素を全て含んでいるバナナです。
自律神経に良い食べ物
自律神経には交感神経と副交感神経があります。交感神経系に作用するホルモンはドーパミン・アドレナリンやノルアドレナリンで、副交感神経系に作用するホルモンはアセチルコリンやセロトニンです。
これらのホルモンは神経伝達物質であり、腸で作られるものも多くあります。よって自律神経のバランスが良くなると腸の働きも良くなり、逆に腸の働きがいいと自律神経も整いストレスに強くなります。
- トマト:脳や神経の興奮を鎮めてリラックスされる役割を果たしているアミノ酸の1つで、神経伝達物質であるGABA(ギャバ)が沢山含まれています。
- 緑黄色野菜:ビタミンCがたっぶりと含まれているため、ストレスがかかったとき副腎皮質ホルモンが充分に分泌されストレス解消に役立ちます。
- 海藻・ナッツ類・ごま:脳や神経の興奮を鎮め精神を安定させる働き
- 乳製品:自律神経を整えるために必要な「トリプトファン」が豊富に含まれています。
うつ病予防の食事メニュー
朝食 |
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昼食 |
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夕食 |
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「朝:昼:夜」の割合は、「3:2:1」が理想ですが、中々難しいと思いますので、「2:2:1」でイメージしましょう。
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まとめ
「これを食べなければ」と意識しすぎるとかえってストレスになります。脳内神経伝達物質を元気にし、自律神経を整える働きが強い食材はありますが、基本的にはお野菜は彩りよく、ほどほどに歯ごたえがある調理法で、よく噛んで食べるようにしましょう。
また牛豚鶏や魚・魚介類は偏らず摂ると栄養のバランスも自然と良くなります。何を食べたら良いか忘れてしまったら、黄色い果物=バナナを食べましょう。
健康運動実践指導者・健康管理士一般指導員の勉強を通じて、健康について運動・食べ物・メンタルなど多くの知識を身に付けています。
知識を知恵に換え実践することで、今でも体力年齢は20歳代をキープし、「華麗に加齢」を目指しています。 2019年3月から、一般社団法人日本ランニングファシリテータ協会認定コーチとして、イオンモールで朝活ランニングの指導をするなど、走る楽しさを伝えています。