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マーガリンやショートニングには「トランス脂肪酸」が含まれているため、「身体に良くない」「動脈硬化の原因になる」と耳にされたことがありますよね?
そこで、マーガリンやトランス脂肪酸についての情報を整理してお知らせします。普段から食品の品質表示を見ることを習慣化し、購入商品の改善にお役立てください。
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マーガリンが危険って本当
マーガリンは、80%以上が油脂(パーム油や大豆油など)です。油脂は、脂肪酸とグリセリンからできていて、脂肪酸は飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸の2種類があり、不飽和脂肪酸にはシス型とトランス型の2種類があり、天然の不飽和脂肪酸の殆どがシス型です。
マーガリンは、液体の油脂に水素を添加して作られる部分水素添加油脂で、この過程でトランス脂肪酸が生成されます。またトランス脂肪酸は不飽和脂肪酸ですが飽和脂肪酸に近い性質で、飽和脂肪酸は脂質異常を引き起こすため、トランス脂肪酸が身体に悪いと言われます。
トランス脂肪酸で心血管疾患のリスク
トランス脂肪酸を摂り過ぎると、動脈硬化の原因となる悪玉コレステロールのLDLコレステロールが増えるだけでなく、善玉コレステロールのHDLコレステロールを減らすため、動脈硬化や心臓疾患(心筋梗塞や狭心症など)のリスクを高める可能性があると言われています。
コレステロールは、脂質(あぶら)のため「水に溶けない」=体内に保てません。そこでタンパク質と結合して「リポ蛋白(タンパク)」として血液中に存在しています。
LDL(低比重リポ蛋白)は、肝臓から全身の細胞や組織にコレステロールを運ぶ働きがあり、DHL(高比重リポ蛋白)は、全く逆で全身の血管壁からコレステロールを抜き取る働きがあります。
体内のコレステロールが多いとLDLが全身にコレステロールを運ぶため、血管壁の内膜にコレステロールが蓄積されてしまいます。そのためLDLコレステロールが悪玉コレステロールと呼ばれています。
規制や表示義務を課している国あり
世界保健機関(WHO)は、2003年にトランス脂肪酸の摂取量を総摂取エネルギーの1%未満(約2.0g)にするよう勧告しました。
南米では、ブラジル・アルゼンチン・チリ・ウルグアイ・パラグアイが、2006年にトランス脂肪酸の表示を義務化しています。
アジアでは、韓国が2007年・台湾は2008年・香港は2010年に表示を義務化。また、タイが2019年1月に禁止令を発令、シンガポールが2021年6月から国内の使用を全面禁止を発表しました。
北米では、カナダが2005年・アメリカが2006年に、表示を義務化。そして米国食品医薬品局(FDA)は、2015年6月トランス脂肪酸の食品添加物を2018年6月から原則禁じる決定しております。
欧州では、デンマークが、2003年6月に食品中のトランス脂肪酸の量を全脂質の2%までとする罰則規定のある行政命令を制定しました。
スイスが2008年・オーストリアが2009年、油脂100g当たり2g以上のトランス脂肪酸を含む商品の国内流通を禁止の規制を決定しています。
情報開示しない国内企業
2019年現在、日本にはトランス脂肪酸の表示義務がないため、マーガリンの成分表にトランス脂肪酸が表示されていない食品があります。
しかし、世界各国の状況からトランス脂肪酸の悪い影響を消費者が心配したため、消費者庁が開示を求めました。
2015年時点で、明治、セブン、ヤオコーは情報開示していません。ですが各食品メーカーは「トランス脂肪酸は危険」ということを知っているため、「部分水素添加物不使用」、「トランス脂肪酸の低減」などの表示をし、改善に動いています。
2006年頃と比較すると2015年までにトランス脂肪酸の含有量を1/10程度まで減らした製品もあります。
また、乳製品・油脂メーカー等多くは、ホームページ上で自社のトランス脂肪酸に関する考え方と取り組みを公開しています。
マーガリンの怖さ
マーガリンは、植物油(大豆油や菜種油など)の液体が原料ですが、扱いやすい固体に変えるために水素を加えます。
この時にプラスチックと似た構造を持つ「人工のトランス脂肪酸」に変ります。それは簡単に消化されず、消化されても他の脂肪酸と同じように役に立つ機能がありません。
逆に、活性酸素を大量に発生されるため、老化を早めたりガンの原因になると言われています。
ファーストフード | トランス脂肪酸含有量 |
フィッシュバーガー | 1g |
フライドポテト(中) | 5g |
フライドチキン(50g) | 1g |
ピザ(1piece) | 1g |
身近なトランス脂肪酸を多く含む材料や製品は、ショートニング(マーガリンから水分等を抜いたもの)、ケーキ用小麦粉、カップラーメン、フライドポテト、ポテトチップス、クッキー類、コーヒーフレッシュ、ドレッシングなど沢山あります。
マーガリン単体で食べる量は多くありませんが、菓子パン類や洋菓子、スナック菓子など目に見えない形で大量摂取しています。
マーガリンの体への影響に関する疑問
植物油からマーガリンを作る時の水素添加で「人工のトランス脂肪酸」ができること、またトランス脂肪酸の含有量を減らすための代替商品のパーム油の製造工程で有機溶剤が使われるなど、身体への悪影響が考えられます。
バターに含まれる「天然のトランス脂肪酸」と「人工のトランス脂肪酸」の身体に対する影響を区別することは難しいですが、人工的に加工することで、人の体に合わなくなる可能性があると言えます。
癌との因果関係は?
マーガリンと癌の因果関係は不確かですが、大腸がんになりやすいと言われています。また、各食品メーカーは、トランス脂肪酸の含有量を減らすため、マーガリンの原料としてパーム油への切り替えを進めています。
しかし、このパーム油は、海外からの長期間輸送時の酸化防止剤として、BHA(ブチルヒドロキシアニソール)という食品添加物が使われています。BHAは、1998年に食品衛生調査会で、ラットに対する発がん性が確認されています。
2018年現在、パーム油は、総植物油使用量(約265万トン)の1/4(約65万トン)に達し、そのうち35%がマーガリンの原料になっています。
石油でできているって本当?
マーガリンの原料は油脂で、植物油(パーム油、大豆油、菜種油、コーン油など)が60%強で、他は魚油や豚や牛の油などの動物性の油が使われています。従って、石油系が原料になることはありません。
ただ原料の植物油脂の製造過程(脂肪分を抽出する時)でヘキサンという石油系の有機溶剤が使用されます。
また、抽出された油を加熱処理して精製し、科学的処理(脱臭・精製・漂白など)をして大量生産をしています。
また、マーガリンや植物油脂は、人工的に加工して作られるため、身体に馴染みにくいものということが言えます。
体に悪いから摂取したらだめ?
マーガリンなどの半硬化油(本来は常温で液体の物を水素添加を行い、常温で固体化した油脂)の摂取は、出来るだけ避けた方が良いでしょう。
マーガリンは、多くの洋菓子や加工食品に含まれているため、食生活が欧米化していることで摂り過ぎる傾向にあります。
イェール大学医科大学院のエリック・J・ブラント博士によると、トランス脂肪酸の食品への添加が禁止された郡では、規制から3〜4年後に心臓発作の報告件数が7.8%減少したとのこと。
また、「人工のトランス脂肪酸(マーガリンやショートニング)」には安全な摂取量はないとも言っています。
トランス脂肪酸低減マーガリンがあるの?
各食品メーカーは、「トランス脂肪酸」は身体に悪いことを知っているため、2006年と2015年を比較すると改善の努力をしています。
日本マーガリン工業会の報告では、農林水産省の発表として、マーガリンのトランス脂肪酸含有量は100g当たり、8.7gから0.99gまで低減されています。
また、2017-2019年の複数の調査で、スーパーで購入できるマーガリンでトランス脂肪酸含有量が100g当たり、0.01g-0.8gとかなり少ない商品は以下のようになっています。
小岩井乳業 | ヘルシー芳醇仕立て、マーガリン発酵バター入り |
月島食品 | パン屋さんのおいしいマーガリン |
帝国ホテル | ホテルマーガリン |
雪印メグミ | まるでバターのようなマーガリン、ネオソフト |
トップバリュー | べに花ソフト、キャノーラソフト1/2、発酵バター入りマーガリン |
健康カウンセラー林さとみのワンポイントアドバイス
マーガリンやショートニングに含まれるトランス脂肪酸は体に悪いと言われますが、トランス脂肪酸だけでなく、脂肪酸の中には肉や乳製品の脂質に多く含まれる飽和脂肪酸も摂り過ぎると動脈硬化を促進し心筋梗塞などの原因になるとされています。
「日本人の食事摂取基準」(2015年版)では、飽和脂肪酸は成人の総摂取エネルギー量の7%以下が目標量と設定されています。
食生活の変化により、成人男性で約4割、女性で約5割の方が脂肪からエネルギーを摂り過ぎていますので、脂質全体の摂り過ぎに注意することが大切です。
まとめ
トランス脂肪酸を避けるために、マーガリンだけでなく、マーガリンやショートニングが多く含まれる菓子パン類・菓子類・加工食品などの摂り過ぎにも気を付けましょう。
また、人工的なものは出来るだけ避け、食品表示を確認し商品を購入することを習慣化することが必要です。
日本で販売されている製品は安心と過信せず、「自分の健康は自分で守る」ことを目指し、栄養バランスの摂れた食事を心がけることが大切です。
健康運動実践指導者・健康管理士一般指導員の勉強を通じて、健康について運動・食べ物・メンタルなど多くの知識を身に付けています。
知識を知恵に換え実践することで、今でも体力年齢は20歳代をキープし、「華麗に加齢」を目指しています。 2019年3月から、一般社団法人日本ランニングファシリテータ協会認定コーチとして、イオンモールで朝活ランニングの指導をするなど、走る楽しさを伝えています。