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目に生気がなく、身なりがだらしなくなってきている人を見かけませんか。メンタルが悪化するとどうなるか、どのように対処すれば健康でいられるか、うつ病を中心に解説していきますね。自分の状態の変化に敏感になり、メンタル悪化防止にお役立てください。
Table of Contents
メンタルが悪化するとどうなる?
メンタルが悪化すると、うつ病やパニック障害などのこころの病を引き起こすと言われています。日本は諸外国と比べて長時間労働が常態化しているため、自由になる時間が少なく睡眠時間も短くなる傾向にあります。
自由時間の減少はストレスを溜めることになり、また睡眠不足は脳や身体に疲労を蓄積することに繋がります。「疲れが取れない」と感じても生活を見直さず、メンタルが悪化しこころの病にかかると、治療にはそれ相当の時間が必要となってしまいます。
うつ病になる
不運な出来事が続いて憂鬱な気分になることはありますが、これはうつ状態で比較的短期間で改善する誰もが経験することです。
しかし、落ち込んだ状態が2-3週間続くと、それは「休みたい」という身体のサインかもしれません。不安感が強くなったり、落ち着きがなくなったりする状態や、肩こりや不眠が続くなど、普段と違う状態を見逃すことで病気に繋がっていきます。
普段と違う状態が続くと、脳のエネルギーが不足し、食欲・睡眠欲・性欲などが様々な意欲が低下する状態が続き、身体的な症状も現れうつ病に罹ってしまいます。
うつ病の特徴
うつ病では、さまざまな身体や心の不調が現われます。身体の不調としては、早朝覚醒、食欲の減退や体重の減少、疲労感・倦怠感、肩こり・頭痛、発汗・息苦しさ、月経不順・性欲の低下などがあります。
また、心の不調としては、意欲減退、興味・喜びの喪失、毎日の生活に張りが感じられない、億劫感、仕事の効率化・集中力の低下、抑うつ気分、不安・過度な罪悪感・取り越し苦労などが挙げられます。
うつ病の行動パターン
会社では、仕事中のミスが増える、単純作業に時間がかかる、物事を決められない、日常的に遅刻する、職場で泣き出す、職場で居眠りする、同僚を避けるなど、周りから見て「いつもと違う」行動が目立つようになります。
また、日常生活では、お風呂に入るのが面倒くさい、起きてもパジャマのまま着替えない、部屋の掃除ができない、動くことが億劫になる、人との付き合いもできず孤独感が募るなど、「普段と違う」自分に気づくことが増えていきます。
うつ病の種類
うつ病は、その症状の現れ方により、2つに分類されます。抑うつ状態だけが起こるものを「単極性うつ病(大うつ病性障害)」、抑うつ状態と躁状態の両方が起こるものを「双極性うつ病(双極性障害)」と呼びます。
現在は、様々な生活上のストレスが発症の主要因と考えられていますが、脳内物質の異常という考え方もある、「大うつ病」の方が増えています。
単極性うつ病と双極性うつ病は、その原因や経過だけでなく薬や治療方法も基本的に異なります。
うつ病の再発
うつ病は、再発しやすい病気で、およそ6割の方が再発すると言われています。多くは年単位で再発し、3-4年後に再発することもあれば、30年後に再発することもあります。再発する期間は個人によって違いがあります。
一方、数か月で再発した場合は、再燃の可能性が高いです。再燃とは、実際は治っていないのに、治ったと思い込むなどして治療を中止し症状を悪化させてしまうことを指します。
症状が良くなっても、薬には「状態をよくする」働きと、「よい状態を維持する」働きがありますので、症状が良くなっても暫く(半年程度)は服用を続けることで、再発の可能性が低くなることが知られています。
うつ回復期にぶり返し
休息を取り、抗うつ薬などの服用によって症状が和らいでくると、気力が回復し、物事への関心も少しずつ湧いてきます。また、体調も徐々に回復し、「やってみたい」と思えることも増えてきます。
このような回復期には調子のよい時と悪い時の差が大きく、体調もまだ万全の状態ではありません。
また、つい「早く復帰しなければ」という気持ちが先立って、やり過ぎてしまうと、その疲れがうつ症状を悪化させる原因となる可能性があります。
残念ながら特効薬はありませんので、どの程度のことをしたら、どの程度疲れるかを予想しながら、じっくりと回復していくことが大切です。
うつ病が重度化
うつ病は、過度のストレスや生活環境の変化など様々な要因が複雑に絡み合って発病します。仕事においては、昇進や昇格など喜ばしいこともストレスになることがあります。
うつ病は、気持ちの持ちようで治るものではなく、治療しないで放っておくと、症状が次第に悪化していきます。状態が悪くなってからの治療は、成果が上がらず、期間も長くなってしまいます。
きちんと治療せず、何とか仕事ができたり、家事をこなしていても、徐々に身体を動かすことが億劫になり、仕事に行けなくなり、普段の生活や人間関係にも支障をきたすようになってしまいます。
メンタルが悪化しないために!初期症状に注意
ストレスが蓄積されると、身体や精神、あるいは行動に様々な変化が現れます。たとえば、「身体面」では、疲れがとれない、首や肩が凝る、よく眠れない(早く目が覚める=早朝覚醒、夜中に何度も目が覚める=中途覚醒)などです。
「精神面」では、気分が晴れない、落ち着きが無くなる、考えが悲観的になるなどが現れます。「行動面」では、引きこもりがちになる、喫煙や飲酒の量が増える、身だしなみがだらしなくなるなどの変化です。
ストレスによる変化には、自分自身で自覚しにくいものもあります。家族や友人などの周りの方が気づきやすきこのもありますので、「疲れてないか」「最近様子がおかしいよ」などの問いかけがあれば耳を傾けることが大切です。
このような状態の変化に早く気づき、必要に応じてストレスの軽減を図ることは、うつ病の予防にとても重要です。
しっかり睡眠をとる
睡眠は、身体だけでなく脳を休める働きがあります。必要な睡眠時間は個人差がありますが、睡眠周期(レム睡眠とノンレム睡眠)が90-120分ですので、4-5回繰り返される6-8時間が最適と言われています。
睡眠時間をしっかりと取ることで、脳が休まり、自律神経のバランスが整うため、ストレスからの回復、耐久性も強くなることが期待できます。また心身ともに回復・修復を行う成長ホルモンの分泌も盛んになり代謝活動も促進されます。
毎日同じ時間に起きて太陽を浴びると体内リズムが整いすっきりと一日を過ごせます。
食事の習慣に気を付ける
神経伝達物質のセロトニンは、トリプトファンという必須アミノ酸などから合成されるため、タンパク質をしっかりとる習慣を付けましょう。
また、極端に炭水化物を制限すると、脂肪やタンパク質などを材料として主に肝臓で脳のエネルギー源であるブドウ糖を作り「糖新生」が始まります。その結果「ケトン体」が産生されるため、血液中にケトン体が増えることに繋がります。
野菜・果物・豆類やナッツ類を中心に、たんぱく質や炭水化物などもバランスよく摂ること、加工食品や甘いものを控えることを習慣化していきましょう。
飲酒習慣に気を付ける
アルコールは、落ち込んだ気分を一時的に高揚させる働きがあるため、うつの辛さを紛らすために「抗うつ薬」代わりに飲む方がおられます。また、不眠を解消するため、寝つきをよくするためにと飲酒に走る方もおられます。
しかしアルコールは長期的には、抑うつ感を高めてしまい、常用化するとうつの症状を強めてしまいます。またアルコールは睡眠の質を低下させる働きがあるため、睡眠障害も悪化させます。
習慣化した飲酒は、抗うつ薬や睡眠薬の効果を弱めてしう可能性があると言われています。
うつ病の方で飲酒の問題を抱えている人は、松本俊彦医師(国立精神・神経センター精神保健研究所)が2011年に行った調査では、精神科外来を受診された40-50歳代の男性の3割以上が、アルコール依存症水準の飲酒や問題飲酒をしていたという結果が出ています。
適度に運動する
適度にリズミカルな運動をすると血行が良くなり、脳内の神経伝達物質であるセロトニンやエンドルフィンなどが多く分泌されます。
セロトニンが増えると、心が落ち着いて気分が良くなります。そして夜になると、セロトニンを材料とするメラトニンが充分に分泌され眠りに誘導するため、質の良い睡眠が取りやすくなります。
エンドルフィンは”脳内麻薬”と言われますが、鎮静効果や多幸感をもたらしてくれるため症状の改善が期待できます。
また、身体を動かすと自律神経が整えられます。交感神経と副交感神経のバランスが取れるだけで、抑うつ状態が改善されることもあります。夜に激しい運動を行うと交感神経が優位な状態になり、眠れなくなる可能性がありますので、ご注意ください。
うつ病になったら?治るための治療法
うつ病を治すための治療法は、休養・薬物療法・精神療法が中心です。先ずは何をおいても休養を取ることが一番重要です。焦らずに休養を取ることが、回復の早道であり、新たな自分のペースをつかむきっかけになっていきます。
薬物療法はセロトニンやノルアドレナリンに作用する、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害剤)やSNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害剤)などの抗うつ薬が使われます。精神療法には、認知行動療法や対人関係療法があります。
休養する
十分に休養を取ることは、うつ病の治療にとってもっとも大切です。しかし、うつ病に罹る方は生真面目な方が多いので、「休むことは悪いこと」と抵抗感を持ってしまい、ゆっくりと休まれません。休養も治療の一環と考え、心と身体をしっかり休め、治療に専念吸えることが重要です。
この機会を好機と捉え、自分の生活パターンなど棚卸を行い、自分を見つめる時間にすること大切です。
毎朝同じ時間に起きる、バランスの良い食事を同じような時間帯に食べることが、健康な心と身体を取り戻すために効果的です。焦らずゆっくりとできることから改善していきましょう。
薬物療法
日本での主な治療薬は、脳内で働く神経伝達物質であるセロトニンやノルアドレナリンに作用するSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)やSNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)と言われる「抗うつ薬」です。
その他にも「抗不安薬」「睡眠導入薬」「気分安定薬」「非定型抗精神病薬」などがあり、医師が抗うつ薬の中から個人の症状に合ったものを処方します。
治療薬は、飲んで直ぐに効果が出るものではなく、効果が表れるまで2-3週間ほどかかるため、先に副作用として、吐き気や眠気・めまい・頭痛などがでる場合があります。
また少量から徐々に服用量を調整していくため長引く感など、気になることがあれば、医師に相談してください。勝手に服用を止めてしまうと逆に副作用がきつくなる場合もあるため注意が必要です。
精神療法
精神療法には、認知行動療法や対人関係療法などがあり、医師やカウンセラーなどが、患者さんと対話を重ねながら、問題を解決する方法を一緒に考える作業を行います。
認知行動療法では、何か困難にぶつかった時に悲観的に考えてしまう物事の捉え方の癖を改善することで、多方向からアプローチできるようになり、うつ状態を悪化させるマイナス思考を断ち切る方法を学びます。
また、対人関係療法は、「重要な他者」=親や配偶者、恋人や親友などの身近でその人に何かがあったら自分の情緒にもっとも大きな影響を与える相手との関係性に焦点を当て、対人関係における態度やコミュニケーションを考えていくものです。
健康カウンセラー林さとみのワンポイントアドバイス
うつ病防止にもバランスの取れた食事、適度な睡眠・運動は大切です。特にリズム運動が脳内神経伝達物質の分泌が活発にしますが、咀嚼(噛むこと)は一番身近なリズム運動になります。
朝起きて太陽を浴び、軽く体を動かし、朝食を摂る。健康の基本がうつ防止にも繋がっています。
まとめ
病気は何でも早期発見早期治療が回復を早めます。うつ病も同じですので、ちょっとした気持ちや体調の変化に気づき、休養を取ることで病気を防いていきましょう。
またうつ病に罹ったら、焦らずゆっくりと休養することが大切で、必要に応じて薬物療法や、精神療法を取り入れることで、再発を防止できる可能性が高くなります。
健康運動実践指導者・健康管理士一般指導員の勉強を通じて、健康について運動・食べ物・メンタルなど多くの知識を身に付けています。
知識を知恵に換え実践することで、今でも体力年齢は20歳代をキープし、「華麗に加齢」を目指しています。 2019年3月から、一般社団法人日本ランニングファシリテータ協会認定コーチとして、イオンモールで朝活ランニングの指導をするなど、走る楽しさを伝えています。